会社復帰。そして免疫療法。しばらく自宅療養をしたあと、夫は会社に復帰した。同時に義母の強いすすめで東京のとある病院で免疫療法を受ける事になった。 他人のリンパ球を注入して、自己の免疫を高める療法。 保険がきかないからかなり高い。でも、義母が料金を出すという。 夫は猛反対したが、結構頑固な義母は強引に進めて行き、あっという間に治療が開始された。 感想は「効いているのかいないのかわからない」だった。 結局、再発したのだから効いていなかったということになるのだろう。 でも、そこでは腫瘍マーカーを調べてくれたし、新幹線で東京に行き、旅行気分を味わえたし、主治医からは絶対に聞く事の出来ない「治りますからね」という言葉を聞き、安心感を得られた。癒しという面では良かったといえるかもしれない。 ちなみに腫瘍マーカーは夫の癌には全く無意味なもの。 体のどこかに炎症があるだけでぐんと上がるから信用度は薄い。 それでも、マーカーが標準値だったと言われれば嬉しかった。 会社では相変わらず、過酷な勤務。 お客様扱いだったのは復帰当日だけで、次の日から少しづつ残業をはじめ帰りが九時、十時というのがざらになった。 当然、付き合いで飲み会も多くなり酒の大好きな夫は毎回午前様。 そんな夫にとてもいらだった。 午前様で、酒に酔いつぶれ、トイレの前で眠りこけている夫を見て、私はキレた。 「大病をしたっていう自覚がないよ!もう治った気でいるの!?お義母さんが大金をだしてやってることをあんたはすべて無駄にしてるんだよ!」 怒鳴り散らし、そして決心した。 インターネットで検索した上咽頭癌のページをわざと夫に見せた。 そこで夫は自分の病気の悪性度を知った。 私が夫にすべて知るように仕向けた。現実を知って欲しかった。 こんなに予後が悪い病気に罹り、それでも病気になる以前の生活をしている夫が許せなくて。現実を知らないからだ。知ったら改めてくれる。 私だけがすべてを知っていて、こんなに毎日悩んでいるのに本人が脳天気に好き勝手やってるのが許せない。現実を知ればいいんだ。 嘘を言うのも嫌だ。隠し事は一切なかった私達だったから。 結局、深く悩まない夫はそのページを見ても何も感じなかったらしく 予後不良のあたりもさらっと流し読みをしただけ。。。 とりあえず、残業は少し減らしたが生活スタイルは何も変えてはくれなかった。 |